玉ねぎが茶色くなるということ。

カレーにとって大切な食材の一つ、玉ねぎにフォーカスしてみたいと思います。

行ってみましょう。

 

 

最初に

お肉の焼き色、プリンのソース、ご飯のおこげ、炒めた玉ねぎ…、多くの料理の過程で「食材が茶色くなる」のは、みなさんご存知でしょう。

食品化学の分野では褐変現象の一つで、食品が茶色く変わることをいいます。

非酵素的褐変、酵素的褐変があります。

酵素的褐色:リンゴを切ったら表面が茶色になるようなことです。

リンゴに含まれる酵素が酸素に触れることによって表面がどんどん茶色に変わります。

その酵素的褐変を抑える為に、水につける、酸素と触れさせない、酵素が働かなくすることや、塩をいれるなどして酵素の働きを抑えます。

 

非酵素的褐変:酵素が関わらなくても褐変することをいいます。

非酵素的褐変には、メイラード反応カラメル化反応の2つあります。

この2つは、食べ物を茶色く美味しくするという点では似ているが、実は似て非なるものです。

 

メイラード反応とカラメル化反応

メイラード反応カラメル化反応の共通点は何でしょうか。

①食材が茶色(褐色)になる。

②香りが強くなる。

③食べ物がおいしくなる。

④湿度が高いときに起こる。

⑤”糖”があるときに起こる。

⑥未解明な部分が多い。

このように似ているところが多いようですが、決定的に違う点があるんです。

 

⑤の”糖”があるときに起こるという点です。

 

メイラード反応は「糖」+「アミノ酸」で起こる。

メイラード反応は、「糖」と「アミノ酸」が一緒に存在するときに起こります。

糖とアミノ酸が結合することに始まり、その結合した物質が酸素や水と反応しながら、変身していきます。

メイラード反応は別名アミノカルボニル反応ともいい、主に食品に含まれるたんぱく質やアミノ酸と糖が科学的に作用して、褐色物質を作る反応のことをいいます。

例えば、ケーキ。たんぱく質を豊富に含む卵や牛乳と砂糖、小麦粉などを混ぜて高温で加熱すると、もともとは白い生地がきつね色に焼き上がります。これがメイラード反応です。

程よく焦げ目の付いた焼き魚、つやつや飴色のアラ炊き、こんがりと揚がったとんかつ、身近な料理の多くがこの反応によって、よりおいしく仕上がっているのです。

他にも、味付けに砂糖と醤油を加えると香ばしさが増すことは、私たちも経験的に知っているかと思います。

原理は知らなくても、私たちは日常的にメイラード反応を利用して料理を作ってるのです。

香ばしい風味と褐色の焼き色が出てきます。

トーストやせんべいの焼き色、ご飯のおこげ、コーヒーやチョコレートの色も、全てこの反応に因るものです。

さらに、メイラード反応が進んでいくと「メラノイジン」と呼ばれる茶色の物質や、香ばしい香りのする様々な物質が出来上がります。

この反応は常温時にも起こりえます。

加熱することで早くなり、155℃で最も活発に反応が起こると言われています。

具体例としては、焼かれたお肉の表面、ご飯のおこげ、パンの耳等。

このメラノイジンは強力な抗酸化作用を持っています。

様々な病気や老化とも関連があると言われている活性酸素をメラノイジンなどの抗酸化物質は無毒化してくれる効果があるようです。

メイラード反応は、ヒトの体の中でも起こっていることが明らかとなり、メラノイジンの体内での生成の含めてメイラード反応の生理的な作用を調べる研究も進められています。

一方で、メイラード反応によって見た目も香りも良くなるからと言って、あまりにも加熱しすぎればみなさんご存知のように「焦げ」ます。

焼き魚を真っ黒にしてしまったり、焼き肉で網の隅に黒い固まりを除けた経験のある方は多いと思います。

焦げの中にはヘテロサイクリックアミン(HCA)と言った発がん性物質の含有量も微量であり、さほど心配はいらないとも言われるが、それ以前に焦げの苦みがきつくて焦げた部分はあまり食べたくありませんよね。

因みに、焼き魚大根おろしというのは定番メニューだが、なんと大根おろしに含まれるジアスターゼやオキシダーゼという酵素には、焦げに含まれる発がん性物質を分解する能力があるんだとか。

美味しい取り合わせとして受け継がれてきたメニューには、経験から生まれた先人達の知恵が沢山詰まっているんだと分かりますね。

 

 

カラメル化反応は「糖」のみで起こる。

カラメル化反応に必要な素材は「糖」です。

糖だけが存在するときに起こります。

糖が加熱によって水分を失っていく過程で、糖の構造が壊れたり、別の結合をはじめたり、様々な反応が起こります。

その結果、茶色の物質や、カラメル独特の苦みを持つ物質が作られるのです。

この反応は加熱したときにのみ起こり、砂糖の場合は185℃以上でカラメル化が始まります。

カラメル化反応メイラード反応はよく混同されるが、カラメル化反応は糖だけです。

フレンチでカラメリゼというのは、糖を褐変させることを指します。

具体例としては、プリンのカラメルソース、キャラメル、べっ甲飴などです。

 

メイラード反応とカラメル化はダブルで起こりうる

ビールやコーヒーの色合いは、メイラード反応カラメル化反応の両方が関係しています。

このように、2つの反応は同時に起こることがあるようです。

一部の糖は糖同士で反応し、一部の糖はアミノ酸と反応するというように、複雑な反応が起きています。

食べ物の茶色化に関してはまだまだ未解明なことが多いようですが、美味しさに関わることは間違いなさそうです。

150~200度くらいでバーナーで砂糖を溶かすと、始めは匂いはありませんが、酸味とか苦みが加わって強い香りがしてくるのがカラメリゼです。

 

155℃の攻防

料理をする上でとても重要な役割を担うメイラード反応ですが、常温では起きにくく(反応に長時間を要する)、加熱されることで活発に反応するようになります。

そして、短時間で速やかに進行する温度は155℃くらいであると言われています。

「焼く」ことでこんがりキツネ色になるが、水を媒体とした加熱方法である「煮る」、「蒸す」では実現しない理由はこんなところにありました。

それでは、「焦げ」はどうでしょうか。

炭化(真っ黒に焦げることをいう)は有機物が酸素を遮断させた状況で加熱され、熱分解をすることで始まります。

熱分解が始まる温度は物質によって異なるが、例えば、木材は160~400℃で熱分解をし、300℃前後から急速に組成分解を始めます。

メイラード反応よりも少し高い温度で起こる様です。

私たちが料理をする際、火加減や加熱時間に気を配り、頃合いを見計らって食材をひっくり返したりするのは炭化を防ぎながらメイラード反応を進行させる、まさに155℃の攻防をしていたという事になります。

 

 

飴色玉ねぎを作る方法を調べてみました。

フランス料理ではオニオングラタンスープにしか使わないですが、甘味を好む日本人の口にあったのかカレーをはじめとした洋食の基本の飴色玉ねぎ。

洋食店でこれを作るときは5時間以上、鍋につきっきりで調理するそうです。

一番のネックは時間がかかることです。

家で何時間も台所に籠るのは、忙しい現代社会では不可能ではないかと思います。

今回は、基本的な原則を外さずに、なるべく短時間で深い味を出す方法です。

本物と全く同じコクや深みが出るわけではないようですが、それでも1/10の時間で8割の味が出せるのであれば、選択肢としては充分なのではないでしょうか。

 

①玉ねぎをスライス

飴色玉ねぎは水分量が鍵を握るので、一度に作るときは量が多い方が簡単です。油脂はバターを使います。

玉ねぎを加熱するときの反応は複雑で、様々な要素の影響を受けます。

乾燥しやすいオーブン調理や電子レンジ調理では三硫化物が生じやすく、煮過ぎたキャベツのような匂いになりがちなので注意が必要です。その為、オーブンローストをする場合は、アルミホイルで包むなどして、湿度を保つのがよいでしょう。

高温で加熱すると揮発性成分が多く発生し、風味が強くなります。

その為、にんにくを調理するときにも言えますが、植物油で調理するよりバターで加熱した方が、風味がマイルドになります。

 

②鍋にバター、玉ねぎを入れて弱火にかける。最初のコツは「厚手の鍋を使う」こと。

鍋肌が厚ければ温度が均一になり、一部分だけ焦げたりはしにくくなります。

低温加熱から始めます。

玉ねぎを加熱すると玉ねぎの水分(玉ねぎは75%が水分)が熱せられ、外に出ていきます。

それによって細胞が壊れ、やわらかく、しんなりとしてくるわけです。

まず、この時外に出てきた糖やたんぱく質、芳香性化合物が酵素反応を起こします。これが飴色玉ねぎの第一段階です。

この段階で効率よく過熱をする為に水を加える人がいますが、始めから水を加えるとエキスが薄まり、結果として酵素反応が進まず、味に深みが出ないです。

酵素は温度が高すぎると失活するので、始めの加熱はゆっくりとしていきましょう。

始めに加えるのは水ではなく、塩です。

塩を加えることで細胞壁が壊れやすくなり、加熱の時間を短くすることが出来ます。

 

更にスピードアップしたい場合のアイディア。

Aスライス玉ねぎを一度冷凍し、解凍してから加熱をします。

冷凍し解凍することで玉ねぎの細胞が壊れ、反応が早く進んでいきます。

また、一部で酵素を凝縮する為、反応か早く進むのです。

B重曹をひとつまみ加えます。phがアルカリ性に傾くとペクチンが溶けやすくなるので、早く柔らかくなります。

が、弱点は重曹の苦みが味を損ねることです。使用する場合は、ほんの少量にしましょう。

 

③5分ほど加熱します。

水分の大部分が飛んで、玉ねぎの温度が上がってきます。

玉ねぎが汗をかき、ショ糖(白い砂糖を同じ成分)が分解し、ブドウ糖と果糖に分かれてきます。

ブドウ糖分子と果糖分子はショ糖分子よりも甘い為、加熱した方が甘く感じます。

また、水分と一緒に辛い成分も蒸発するので、より甘く感じるようになるわけです。

 

④これから中火に上げます。

本来は弱火で加熱していきますが、調理時間を短くする為火力を上げます。

この段階では酵素ではほぼ失活しているので、火を強めても大丈夫です。

玉ねぎの温度が110℃を超えると茶色く色付きます。

玉ねぎよりも鍋肌についたエキス分を玉ねぎに溶かし込むようにしてください。

この工程によって、鍋肌についた糖とたんぱく質が焦げるのを防ぐことが出来、水分によってそれらの化合物を全体に行きわたらせることが出来ます。

 

⑤このまま中火で加熱を続けます。

玉ねぎが徐々に色づいて来る頃です。

このくらいの段階になるとメイラード反応が起き始めます。ちなみに、あめ色玉ねぎは英語で「キャラメライズドオニオン」と言いますが、化学者たちは「玉ねぎの色付けは、カラメル化ではない。なのでメイラードオニオンと呼ぶべきだ」と主張しているようです。

メイラード反応は複雑で、糖、たんぱく質、酵素の相互反応によって起きる現象と前述しましたが、この反応を更に早める為には、

A重曹を加える。メイラード反応はアルカリ性に傾く程早く進むが、欠点は苦みが出ること。

Bさらに温度を上げる。メイラード反応は温度が高い方が早く進む。欠点はあまりにも強いと焦げないようにコントロールが難しくなるところ。

 

⑥焦げないように加熱をしていく。

焦げそうになったら水を足します。

鍋は常に混ぜ続けるのが無難です。

なべ底にこびりついた水溶性の成分を玉ねぎに戻し、全体を均一に加熱します。

15分もすると、かなり色付いてきます。

色付いているというよりも色を重ねていくイメージです。

この段階まで来ると玉ねぎの水分が少なくなってくるので、火加減のコントロールが難しくなってきますので、強すぎると思ったら、迷わず弱火に落しましょう。

火から外して水を注ぎ、鍋肌のこびりつきを落としてからガスコンロに戻す、の繰り返し作業です。

水を注いでは混ぜることを6~7回繰り返しながら、30分間炒めたらあめ色玉ねぎの出来上がりです。

保存する際は冷凍するようにしてください。

一部分だけに焦げがあったりしたら失敗なので、可能であれば取り除きましょう。

他の素材が色々と入るカレーやハヤシライスに使うのに、充分な飴色玉ねぎになりますよ。

 

 

玉ねぎが飴色になることで、より一層旨味を出してくれていることが、食品化学の点からも学べました。

これからも美味しいカレーの為に頑張ってくれる玉ねぎに感謝です。

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